Introductionの書き方
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3段構成を意識する
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分かっている事と分かっていない事を明確に!
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短く、そして簡潔に(ダブルスペース[US style]でA4 1枚[250-300 words])
Introductionはdiscussionと並んで難敵です。短くシンプルに魅力的なストーリーを作り上げなければいけません。読者が「この論文は良さそうだ」「これは大事な問題だ」と思ってくれるようなintroductionを目指します。
1段落目
この段落の目的は、読者をひきつける事です。そのために話は大きく始めて、それから狭めていきます。例えば「救急外来では、が世界的な問題である。それによりな状況になっている。」など大きな視野にたって大きく始める。有病率、救急外来受診数、死亡率、 コスト、ER滞在時間など、疫学的な研究から具体的な数字を引用すると、読者の関心を引きつけられます。1段目を読み終わった時点で、「ああ、この問題は重要だね」と思わせるような文章にしましょう。ただし、本筋とあまり関係のないことを強調しすぎないように(例えば入院リスクの話をしているのに、直接関連のない死亡率の話を強調しない)。
2段落目
この段落の目的は、「what’s known」および「what’s unknown (=knowledge gap)」を明確にすることです。そして後者のgapを埋めることが研究の目的(=3段落目)」になります。過去の研究から分かっていることと (what’s known)、分かっていない事 (what’s unknown)を明確にし、自分の研究が埋めるknowledge gapを明確にします。また過去の研究が多い場合にはその研究限界などを説明したうえで、gapが存在することを明確にします。まったく過去に研究がない場合でも類似している研究を引用し、不十分であることを説明しましょう。ただし、過去の研究を引用しすぎてレビューのようにならないよう注意してください。あくまでサマリーです。この段落の後半が最も難しくかつ重要な点となります。
具体的にはまず一行目で前の段落を受けて「exposure Xとoutcome Yの間に関してはこういう研究がある」として、具体的な数字を述べていきます。また同時に過去の研究のlimitationsに関しても触れられると効果的です(もちろん自分の研究にはそれらのlimitationsがないことが前提です)。そして「However」 などの反語で強調しつつknowledge gapを明記します。There is a dearth of research on/Little is known aboutが決まり文句です。
例)Despite its clinical and public health importance, there is a dearth of research to investigate the relationship between X and Y.
3段落目
2段落目で明確にしたknowledge gapを埋める=研究の目的となります。そのために、「To address the knowledge gap in the literature, we aimed to investigate ***」, と書けばいいのです。そして
「自分の研究の目的はズバリこれだ」
目的は明確に書きます。さらに研究デザインも簡単に述べましょう。記述研究なのか、それとも仮説研究なのかを明確にし、仮説研究ならば、何と何を比べるのかを述べます。3段落目は2-3文にしましょう。
例1)To describe(記述する)the changes in the reasons for intubation over years.
例2)To determine/investigate the association between X and Y.
特に大事な点として、
1)先にも述べましたが背景となる論文にはしっかりと目を通しておきましょう。その論文のアブストラクトだけを読んで引用してきてはいけません。
2)前の研究のことを詳しく書きすぎて「What’s new」が弱くならないようにしましょう。
Discussionの書き方
- ストーリーラインを日本語で十分に練る
- 論理を飛躍させない
- 自分の論文の長所・弱点を補うための論文を十分に検索しておく
- 一つの段落にメッセージは一つ
確実に皆さんが一番苦労するところで、論理構成と英語の表現で頭を抱えることになると思います。IntroductionやResultsで書いた内容とできるだけ重複しないように気をつけましょう。
4A. 結果のまとめ
まず「この研究の結果は○○でした。みなさんに伝えたいメッセージは〇〇です!」のように3−4文で結果をまとめます。Large databaseを用いた研究などデータセットやセッティングに強みがある場合は文頭で「10,000例もの挿管データを用いて、我々は***であることを発見した」というように書き始めるとimpressiveです。また、この段落の最後に核となるメッセージをさらりと入れられると効率的です。
例)In this prospective multicenter study of 10,104 ED intubations, we found the association of X with Y. Our observations suggest that(自分の研究から言える核となる内容を書く)。
例) Our data demonstrate that, over the 6-year period, emergency physicians in Japan have gained competence in the most advanced airway management techniques – a defining intervention in the state-of-art practice of emergency medicine. Our observations would help to cement the role of emergency medicine as a distinct discipline.
4B. 過去の研究との比較
この段落の目的は、過去の研究のなかで自分の研究結果の位置付け(Results in the context)[AH6] を行うことです。
そのために過去の研究との比較が必要になりますよね。書き方としては、似ていない研究から紹介して、次に似た研究を紹介して自分の知見をサポートします(ケースバイケースですが)。そして過去の研究と比べた場合に、過去の研究にはどのような欠点があるかを軽く述べられると効果的です(ただし、その研究の筆者にreviewが回ることがあるので、強調しすぎずにあくまで客観的に述べる)。
例)過去の研究が記述研究で、自分たちの研究が仮説検定研究である時には “While the prior descriptive study reported the ***”のようにさらりと記述研究であることを強調することで自分達の研究の良い点を強調させます。
この段落は”Consistent with our findings, a prior study reported that ***”のようにconsistentという単語をうまく使うと書きやすくなります。同様に締めの文章として「自分たちの研究が前の研究の上に成り立っており、今回の研究はそのエビデンスをさらにextendする」という決まり文句を使うことで段落が引き締まります。
例)Our study corroborate these prior studies, and extends them by demonstrating THE MAIN FINDINGS.
4C. 研究結果の考えうるメカニズム
まずは自分の研究結果から論ずることが理想です。それが不可能ならば過去の研究結果からバランスよく引用します。過去には膨大な研究があるので、自分の結果をサポートするような研究が必ずあります。最後にそこから自分の研究は何を訴えることができるのかを明確にしましょう。結構やりがちなのが、ただただ過去の研究を羅列してしまうことや、自分の研究結果から飛躍した論理展開をしてしまうことです。ちゃんと事実と推測は分けましょう。違いを説明する際にも具体的な数字を出したりするなど、「ぼやっ」としないように気をつける必要があります。また、過去の結果で都合の悪い研究があったとしても、それがmajor journalなどから出ている場合は触れないわけにはいかないので、理由付けを頑張って行い、自分の研究の長所を強調しましょう。
4D. 研究の意義 = Implications
自分の研究が誰にどのように影響を与えるかを述べます。つまり 臨床医、研究者、医療政策策定者のうち最低2者それぞれにどのような意義があるのかを具体的に書いてください。気道管理の研究をして、「自分の研究は気道管理にimplicationを与える」とするのはダメ!自分の研究により、臨床医、研究者、医療政策策定者が具体的にどのように行動を変える必要があるのかを説く必要があります。特にここは「一見良さそうなことを言っているけど具体性に乏しい」美辞麗句のオンパレードになりやすいので、具体的に書いて説得力を持たせる必要があります。賛否両論ありますが、ImplicationsはConclusionsに含めることを進めています(下記) –論文を強く終えることができるため。
4E. 研究の限界 = Potential limitations
疫学研究においては内的妥当性(選択バイアス、情報バイアス、交絡因子など)や外的妥当性(システム・環境の違い)を述べます。過去の類似した研究のlimitationsを参考にするのもひとつの方法です。Limitationsのない研究はありません。 ポイントは、査読者が気づくであろうlimitationsは隠さずに書いておくことです。しかしながら、それに対する反論も付け加えておくことも大事です。ここは幾つかのスタイルがありますが、JEMNetではlimitationを述べた後に「しかし、我々はこのlimitationをaddressするため**を行った」というようにlimitationsの影響を最低限にする努力(例えば感度分析)をしたことを明記するのをお勧めしています。
例1) 相関関係を示したが、因果関係を証明するものではない➡しかし超緊急の状況でランダム化比較試験をするのは現実的ではない。
例2) 〜〜といった限界がある➡しかし、〇〇のようにしてその限界を最小にするよう努力した。
例3)**のlimitationに関しては**な感度分析をして、結果が同じであることを確認している。
4F. Conclusions
これはdiscussionの一部として書く場合と、別に分ける場合があります。シンプルがゆえに結構難しいですが、メインメッセージを数行で書きましょう。論文によってはimplicationをここにくっつけてしまう事もあります。
JEMNetではここにdiscussionを踏まえた過去の論文からの位置付けおよびimplicationsを加えて強く終えることを推奨しています(ここにimplicationsを書く場合は上記のDiscussionで述べすぎないようにしましょう)
5. Referencesの書き方
- 必ず文献管理ソフトを用いる!
- 雑誌毎にstyleが違うので確認する
- 最後は自分で確認する
論文の指導を受けたことのない研究者に見られる特徴のひとつとして、referencesがいい加減である、というのがあります。先に述べたように「過去の知見の上に自分の研究が成り立っている」わけですから、ここが適当=自分の研究の土台が適当、ということです。Referencesが適当な論文がいい内容なはずがありません。質の良い査読者はここを見逃しません。
文献管理ソフトを手に入れる
まずは文献管理ソフトを手に入れましょう。無料であればMendeleyがよく用いられています。最近はサブスクリプション制のものが増えてきたので、無料ソフトに慣れてからでも遅くはないと思います。もし病院がお金を出してくれるのであれば最もスダンダードなものはEndnoteです。他にはZoteroなどのフリーウェアもあります。最初はみんなと同じものを使う方が相談もしやすいですし、インターネットや本でも調べることが可能です。Endnoteを安く手に入れる方法はネットで検索してみて下さい。2万円かからない方法もあります。
字体に注意する
Endnoteなどの文献管理ソフトの最初の字体はTimes New Roman以外のことが多いので訂正する必要があります。
スタイル(フォーマット)
Endnoteには様々な雑誌に対応したスタイルが保存されています。これらから投稿先のjournalを選びましょう。Referenceも論文の一部なので絶対に指示に従ったスタイルで記載して下さい!Endnoteであれば各雑誌用のスタイルが登録されているのでそれを選べばOKです。もし無い場合も追加でインストール可能です(詳細はインターネットで検索してください)。
1)筆者名:多くのジャーナルでは6名以内は全員記載、それ以上なら最初3名を書いてあとはet al.とまとめるパターンが多いです。Authorがグループ名になっている場合は表記がおかしなことになりやすいので確認が必要です。
2)雑誌名は基本的にabbreviationを用います。Abbreviationの方法は決まっていて、PubMed内の「Journals in NCBI Databases」で検索ができます。勝手にabbreviationを作らないようにしましょう。Endnoteの初期設定だとabbreviationになっていないこともあるので、その場合は少し設定変更が必要になります。
例) Annals of Emergency Medicine ➡ Ann Emerg Med
3)引用の仕方を間違えない
これも論文を初めて書く人に間違いが多く見られます。引用のしかたも雑誌によって異なります。〜〜 [16].のように角括弧を使う場合は句読点の直前に、〜〜.16のように上付きであれば句読点の直後にreferenceが付きます。ただしBMC系列だと、 〜〜.[16]のように句読点の直後に来ることもあるので、必ずinstruction for authorsをチェックして下さい。
文献ソフトは絶対でない
Endnoteなどに任せても書き方が微妙に違う場合が多々あります。これは仕方が無いのでいちいち手作業で直さないといけません。投稿前に必ずチェックしましょう。
論文をまた引きしない
論文の本文が見られなかったり、あちこちで引用されている論文を見たりするとつい、「abstractだけ読んだけど、これでいいだろう」とか「適当にこの有名な論文を引っ張ればいいか」と思ってしまうかもしれませんが、絶対にいけません(恥ずかしいことです)。Reviewerによっては丁寧にreferencesまでチェックします。
Abstractの書き方
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字数と書き方を確認する
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Abstractを読んだだけで内容が分かるようにする
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多くの読者はabstractしか読んでくれないので気合を入れて
Abstractは本文が書けてしまえばそこまで難しいものではありません。ただし、要約力が試されます。必ず字数制限は守り、できる限り字数上限いっぱいまで書くことが大事です(できるだけ情報を入れる)。250字ならばheading込みで245字は書くように頑張りましょう。
Abstractはbackground, methods, results, conclusion のような形式から、importance, objective, design, participants, main outcome, results, conclusions and relevance のように詳細に記述しないといけない形式まで、雑誌によって異なります。後者の場合は箇条書きでかまいません。Abstractの書き方も雑誌に指定があるので確認しましょう。書き方の参考になるのは同じ雑誌の他の論文なので、テーマが近いものを探して書き方を学びましょう。
多くの読者はAbstractしか読んでくれません。従って、Abstractを読んだだけでも内容が明確に伝わらないといけません。
書き方の例)
Background: X is common among individuals with disease Y. However, little is known about the association of X with severity of disease Y.
Objectives: To examine the association of X with severity of disease Y and in-hospital mortality.
Methods: This is a retrospective cohort study using ** data from 20** through 20**. We included patients (aged ≥40 years) hospitalized for Y. The outcome measures were **. To examine the association between X and each outcome, we fit unadjusted and adjusted logistic regression models. In the adjusted models, we adjusted for **, **, and **.
Results: Of * patients hospitalized for Y, **% had condition X. X was significantly associated with a higher severity marker (adjusted OR ** [95%CI **-] P=**) compared to non-X patients. Similarly(By contrast), **. In the sensitivity analysis using **, these results were consistent.
Conclusions: In this ** study of patients hospitalized with Y, X was associated with high acute severity. These findings suggest that **.