図表の書き方
Table作成術
- 表は結果と完全に一致させる
- 図表だけをみて研究内容と結果がわかるようにする
- 投稿規定に必ず沿う
Tableの数と順番
Tableは3-4個が理想と思われます。通常Table 1.には患者特徴(Patient characteristics)が来ます。その後はアウトカムのtable(s)が来ることが多いです。記述研究やRCTの場合はこの限りではありません。多過ぎる場合はsupplement fileとします。本当に必要と思われるもののみをmain textのtableとしましょう。
もっともやりがちなミスとして、図表と本文の数字が合っていないという点があります。これはサイエンスの世界ではご法度!!!です。数字が大事な世界で数字を間違うというのは一番やってはいけないことの一つです。このミスが出る理由として、単純な書き間違いによるものもありますが、多いのは1)コピー&ペーストによるもの、2)「一旦tableを作る⇨相談で再度解析が必要になる⇨書き直し」という一連のプロセスにより元のtableと本文の数字に相違が出るもの、という2パターンです。したがって再解析した場合などtableが変更された場合は要注意です。数字を変えたらそれに対応する本文、abstract、table、figureなどすべての箇所に注意しましょう。
他にやりがちなミスとして、
1) 本文は平均/mean(標準偏差/SD)で書いてあるのに、tableでは中央値/median(四分位/IQR)で描いてある
2) 解析ではパラメトリック検定(t-検定)などを用いているのにtableではノンパラメトリックの記載になっている
3) 本文とtablesで項目の表記や順番が異なる
があります。
TableはExcel等で作成して、Microsoft Word にそのまま表形式で張り付けます。 Power Point、画像ファイルは使用しません。 Table内のフォント・書式は本文と合わせ、記号やスペースの使い方も本文中と同じにします。項目の順番も本文と統一します。性別、体重、既往歴の順番で本文中に書いたならば、その順番通りに表にします。表に縦罫線は使用しません。Tableの横罫線は表の一番上と下、あと横項目とデータの間、の3本です。各群の人数も書きます。
ちなみに小文字のnと大文字のNは意味が異なるので注意してください。大文字のNは母集団のサイズを、小文字のnはそこから得られたサンプル数を示します。6,000人の患者群のうち、1,200人が対象となった」という場合は、“N=6,000, n=1,200”です。
罫線以上は太文字で、罫線以下は非太文字です。データ、横項目はセル中央揃え、縦項目はセル左揃えです。データでは数字と括弧の間にスペースを入れます。ED, SD, IQRなどの略語(abbreviation)は必ず説明します。補足説明は脚注記号(*など)を使って表の下(footnote)に説明を加えます。
ExcelからWordへデータを貼付けするこつ
Tableには大量の数字を書かなくてはならず、手作業で行うとエラーも増えますし、時間もかかります。有効数字を一桁変えるために、全てデータを入力し直したあと統計計算のエラーが発覚し再度やり直し・・・。このように絶望した事は1度や2度ではありません。
このような時に役に立つのがExcel関数、 =ROUND(数字,桁数), =CONCATENATE(文字列,文字列,文字列)などです。ROUNDは”数字”を四捨五入して”桁数”分の小数を返します。CONCATENATEは異なるセルにある文字列を一つのセルに結合します。
A | B | C | D | X | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 10.181 | 8.121 | 11.812 | #1 | #2 |
2 | 8.234 | 5.345 | 10.234 |
例)「グループ間の差と差の95%信頼区間」が10 (8 to 12)とします。これを10.2 (8.1 to 11.8)に変える方法を紹介します。
統計ソフトから出力されたばかりのデータがExcelシート上にあるとします。A1にグループ間の差=10.181、B1に95%下限値=8.121、C1に95%上限値=11.812、A2,B2,C2に次行のデータがあります
#1 D1に=CONCATENATE(ROUND(A1,X),” (“,(ROUND(B1,X)),”-“,(ROUND(C1,X)),”)”)
#2 X1に希望の有効数 “1”
を打つとD1に出力結果10.2 (8.1 - 11.8) が得られます。X1に2と打つと出力結果10.18(8.12 to 11.81)がでます。D1をコピーしてD2,D3,D4に貼付ければ次行のデータがまとめて加工可能です。最後はExcelの出力結果をWordに「形式を選択して貼付け→値のみ」すれば、完了です。応用次第では表の数字を全て数秒以内に正確に変えることができますので、是非お試しください。
※)半角スペースにご注意下さい。
Figure作成術
- Figureは論文のハイライト!
- 本当に大事なものだけをfigureにする
- できるだけ丁寧に見やすいfigureを作る
Figureの順番と数
Figureの数は1、2個です。多いと焦点がぼやけてしまうので、最もインパクトのあるfigureを前面に押し出しましょう。またpatient flowは文章で説明できる程度のものならばわざわざfigureにする必要はありません。
どんなFigureを作るのか?
とにかく論文のハイライトをメインfigureにします。Figureは極限までシンプルかつ理解しやすいものにします。そのfigureだけを見ても意味が分かるように心がけましょう。知人などに頼んで何回も感想を聞きながらわかりやすさを中心に修正していきます。オッズ比など多くはtableで示す場合も、figureにしてしまうというのは一つの方法です。
Figureの作成
これは持っているソフトウエアにもよると思われますが、誰でも可能なのはExcelでグラフを作成し、PowerPointなどの画像編集が可能なソフトで最終的なfigureに仕上げ、その後画像ファイルとして保存するという流れです。繰り返しになりますが、figure内のフォント・書式は本文と合わせます。記号の使い方も本文中と同じです。略語は使わないようにします。項目の順番も本文と統一します。Rを使う場合は描画能力に優れたパッケージ (例:ggplot2)がたくさんあるため、それらを用いるのが良いでしょう。
グラフにおける主軸の目盛り数字は2−4個ぐらいです。これ以上多いとグラフがうるさくなり、reviewersの理解を妨げます。グラフ中に罫線は使用しません。グラフはデータの傾向を示すものなので、細かい数字をそこから読み取らせる必要はありません。
垂直方向のラベルは、日本語ならば上から下ですが、英語は下から上に向かって書きます。
グラフの線は太め(2pt)にします。基本的にはカラーはあまり使用しませんので、棒グラフの場合は、パターンを変えてモノカラーで識別できるようにします。なるべくシンプルかつ周りのパターンとはっきり識別できるようにしましょう。矢印にもお作法があります。太めの線(2pt)を使い先端は細い二等辺三角形です。矢印線は斜めには引きません。水平か垂直方向で折り返します。カラーがOKなジャーナルではカラーでも投稿可能です(追加費用がかかる場合があります)。
Figure Legends (図の説明)
Figure legendsは本文のreferencesの後に書きます。本文とは別の新しいページから始めます。Figure legendsには、図表番号と一致する算用数字を付けます。図中の記号や印について、必ずfigure legends中で説明します。
画像ファイル・解像度
一般的にはJPEGが有名ですがTIFFで受け付ける雑誌が多い印象です。ファイルサイズは大きくなるけれども、その分異なるパソコンで表示しても色味の変化が少ないという理由かららしいです。PowerPointならばJEPGでもTIFFでも「画像として保存」が可能です。解像度(dpi,pixel)とは画像の細かさや滑らかさを表す数字です。雑誌によって最高・最低解像度が違うので投稿前に確認が必要です。画像を保存するときに解像度を指定して保存できますが、PhotoshopやPixelmetorなどの写真加工ソフトがあれば解像度の調整もできます。
写真
救急分野の論文では写真を使う事が少ないので、必要ないかもしれませんが、写真の加工をした場合は編集者に知らせる必要があることを知っておいた方がよいと思われます。STAP細胞騒動以来特に厳しくなったかもしれませんね。また、患者の画像はBMJ系列だと専用の同意書が必要になる場合があるので注意しましょう。